夏が過ぎて涼しい頃になると、なぜか気分が落ち込んでしまう。いくら寝ても寝たりないし、食欲は増すばかり…。それはもしかしたら「季節性うつ」かもしれません。季節性うつの症状や原因、改善法について、婦人科・エイジングケア専門の成城松村クリニック・松村圭子院長に聞きました。
「うつ」聞くと深刻なイメージがありますが、季節性うつとはどのようなものなのでしょうか?
「名称に『うつ』という単語が入っていますが、正しくは『季節性感情障害』と呼ばれるもの。秋口になると気分が落ち込んだり気力が低下したりといった症状が出ますが、春頃になると治まります。また、通常のうつ病では精神的な変化のほかに、食欲の減退や不眠といった症状が挙げられますが、季節性うつは甘い物を欲する過食やいくら寝ても寝たりないといった過眠の症状が出てきます。発症する原因も通常のうつ病とは異なるんですよ」
通常のうつ病は生活環境の変化や仕事のストレスなどさまざまな原因が考えられますが、季節性うつの原因はずばり「日照時間」にあるそうです。
「心身の安定や安らぎを与える神経伝達物質に『セロトニン』というものがあります。別名『幸せホルモン』と呼ばれており、これが不足すると気分が落ち込んだりイライラしたり、心のバランスが取りにくくなってしまいます。セロトニンは朝の日差しを浴びることで分泌されるので、秋へ向かうにつれて日照時間が短くなると、セロトニンの分泌量も落ちやすいのです」
「もし『季節性うつかも…』と感じる人は、病院へ行く前にまず生活習慣を見直してください。この時期からのセルフケアで十分防ぐことができます」と松村先生。その方法はたったの3つ。
「この病気には、日中にセロトニンを分泌させることが大切です。朝起きたら日差しを浴びて分泌を促しましょう。そのためには休日だからと寝だめをするなど、生活リズムを崩すのはNG。規則正しい生活は、女性に多い自律神経の乱れによるトラブルも防いでくれますよ」
「季節性うつの症状である『過眠』は、良質な睡眠をとることで予防ができます。途中で起きてしまう中途覚醒は良質な睡眠の大敵なので、自分が寝やすい室温を探してみましょう。目安は27度~28度です。また、寝る1~2時間前に湯船に浸かって体を温めると、体温の低下とともにスムーズに眠りにつくことができます」
「現代人は常にエアコンが効いている環境にいるので、体は意外なほど冷えています。体を冷やしすぎると、季節の変化に対応できなくなって体調を崩すことも。これはいわゆる『夏バテ』と呼ばれるもので季節性うつとは少し違います。しかし、夏バテをそのままにしておくと秋口には倦怠感や睡眠障害といったさまざまな症状が表れてきます」
夏バテ対策が季節性うつの予防にもつながるのですね。具体的にどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか?
「室温が低いと感じたら、ストールや羽織りもので体を温めること。また、食生活でも体を冷やさないように心がけたいです。たとえば、野菜はサラダで食べるよりも焼いたりボイルしたり火を通したものを取り入れるとよいでしょう。水分を摂るときも常温か温かいものを飲むことを意識しましょう」
季節性うつのケアはどれもすぐに始められることばかり。快適に秋を過ごせるように、今のうちからしっかりと準備をしておきましょう。
広島大学医学部卒業、同産婦人科学教室入局。2010年、婦人科・エイジングケア専門の成城松村クリニックを開院。西洋医学の枠にとらわれず、漢方などの東洋医学や、点滴療法、オゾン療法などさまざまな領域を取り入れた女性のためのトータルサポートを行っている。
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