乾いたタオルで拭くのはNG!? 汗をかいたら正しくケアしよう

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ウレハダ編集部

乾いたタオルで拭くのはNG!? 汗をかいたら正しくケアしよう

徐々に日中の暑さを感じるようになってくる4月。そろそろ制汗剤を使い始める方もいるのでは? 気温が高くなるにつれ、女性の大敵になる汗は、いったいどのようにケアしたらよいのでしょうか。

今回は、おさめスキンクリニックの納さつき先生に、汗のメカニズムとケア方法を教えてもらいました。

そもそも汗が出る仕組みとは?

納先生によれば、汗を分泌する汗腺には大きく分けて2種類あり、それぞれ特徴が異なるそう。

エクリン汗腺

「暑いときや運動したときなどの温熱刺激によって全身から汗を出し、体温を調節するのがエクリン汗腺です。また、精神的緊張や味覚刺激(辛いものを食べたとき)などに発生する、いわゆる普段かく汗が出るところです。エクリン汗腺は、口唇などを除くほぼ全身に分布し、手のひらや足の裏、ワキの下に最も多いといわれています。発汗することで体温を下げ、体の調子を調整する働きを持ちます。ここから1日に出る汗は700~900mlとも。その99%が水で、ほかにナトリウムや塩素、カリウムなどを少量含みます」

アポクリン汗腺

「アポクリン汗腺は哺乳類の芳香腺が退化したもので、異性へのアピールや生殖に関わる感情などの情緒刺激によって発汗します。ワキの下や鼻の周り、乳輪、耳の裏といった特定のパーツの毛穴に備わった汗腺で、ホルモンが増加する思春期に発達します。ここから分泌される汗はタンパク質や脂質、糖質などを含んでいるため、体臭につながります」

アポクリン汗腺から発生する汗は、もともと異性を惹きつけるフェロモンの役割を果たしていました。遺伝によってアポクリン汗腺の数は変わり、個人差があるそう。また、ワキガはアポクリン汗腺から出る汗に含まれる脂肪酸が分解され、ニオイ物質の低級脂肪酸となるのが原因といわれています。

長時間放置したら危険? 汗による肌のトラブル

では、これらの汗は肌にとってどのような役割を果たしているのでしょうか?

「汗と皮脂が混ざり合うことで、皮膚を守る『皮脂膜』がつくられます。この皮脂膜は、肌を保湿して外部の刺激から肌を守る役割を持っているのです。また、気温が高くなると、暑さに対応するためにたくさん汗をかきますよね。このような大量の汗は、日常生活で分泌される汗とは異なり、放置するとアルカリ性になります。汚れた皮脂膜や不要な角質の除去に貢献します」

実はきれいな肌を保つのに、汗は不可欠なんですね。反対に、汗が肌に与えるデメリットはあるのでしょうか?

「先ほどご説明したように、気温が高いときにかくアルカリ性の汗は、長時間皮膚に付着していると刺激になることも。さらに、空気中のチリやホコリが肌に付着しやすくなるので、肌荒れやニオイのトラブルにつながります」

肌荒れやニオイトラブルのほかにも、汗は体へ深刻な影響を与えうるのだとか。

「大量に汗をかいたり、皮脂や汚れが毛穴に詰まったりして、かいた汗が皮膚の外にうまく出ないと、汗腺から皮膚への汗の通り道・汗管(かんかん)が詰まってしまうことがあります。すると、汗が皮膚の内部に溜まって汗管の炎症を起こしたり、その周りの組織に流れ出したりする場合も…。これが、水ぶくれやあせもができる原因の一つです」

また、アトピー性皮膚炎の方にとっても、汗は重要な役割があるそう。

「適切な発汗は、アトピー性皮膚炎の方にとって特に大切です。アトピー性皮膚炎になると、発汗の能力が低下するといわれています。汗が少ない状態は、角質の水分量が減り、バリア機能が低下します。その結果、病原菌に対する抵抗性が弱まったり、皮膚が乾燥しやすくなり、皮膚炎が悪化しやすくなるのです。また、体温を下げるための汗も減って、熱がこもりやすくなる傾向があります。汗の出口が皮膚でふさがると、真皮内で汗がもれ、かゆみの原因になることも。アトピー性皮膚炎の方は、気温の高い季節も日常的にワセリン以外の保湿剤を選んでスキンケアするのがオススメですよ」

乾いたタオルはNG! 正しい汗のケア方法を学ぼう

では、このような肌トラブルを防ぐには、汗をかいた後にどのようなケアをすればよいのでしょうか?

「汗をかいたら長時間放置せず、流水で洗い流すのが最も効果的です。洗い流すのが難しいときは、すぐに拭き取りを。その際は水で濡らしたタオルを使いましょう。汗はホコリが付きやすく、またナトリウムなどのミネラルを含んでいるため、乾いたタオルを使うとそれらが皮膚に付着したままになってしまいます。すると、肌のかゆみや赤みの原因になることも…。乾いたタオルを使うなら、スプレーで水をかけてから拭き取るとよいでしょう」

濡れたタオルで拭いた後は、保湿剤を塗ると◎。ただし「保湿剤を使うと発汗する」という方は使う種類をよく選びましょう。では、汗をかかないように、個人でできる予防策はあるのでしょうか?

「オススメは、数日に一度のケアでも効果が持続するタイプの制汗剤です。また、『補中益気湯(ほちゅうえっきとう)』という漢方は、体の疲れをとるだけではなく、汗を抑える効果もありますよ」

ワキの汗がどうしても気になるときは、医療機関で保険適用可能な対処法もあるとのこと。納先生によると、ワキや手の汗が収まることで精神的に楽になったという方は多いそう。汗で困っている方は、一度クリニックで相談してみてはいかがでしょうか?

取材協力:納さつき先生

「おさめスキンクリニック」医院長。2000年3月帝京大学医学部及び同大学院卒業。同大学附属病院皮膚科入局(助手、レーザー外来担当等)。国立国際医療センター、都内美容皮膚科等で研鑽を積み、多くの皮膚疾患診療経験をもつ。