着物を身にまとっている女性には、凛とした美しさを感じます。ただし、洋服とは構造が大きく異なるので、普段どおりの動きをすると着崩れてしまったり、お行儀が悪く見えてしまったりすることも。
そこで、大人の女性として身に付けておきたい、着物姿を美しく見せる所作や立ち振る舞いについて、ハクビ京都きもの学院の総院長・大塚純子先生に教えてもらいました。
着物は布地を折りたたみながら体にまとって、腰や胸の下あたりを紐で固定することで着付けをします。そのため、大きな動きをすると着崩れが発生してしまいます。
「特に裾の着崩れは直すのが難しい場所なので、歩くときには歩幅を狭くして小股で歩くとよいでしょう。無理な姿勢は襟元がゆがむきっかけになるので、大きな荷物などを持たないようにすることもポイント。バッグは片手で楽に持てる大きさを選ぶと、上品に見えますよ」
着物を着ている状態で階段などの段差を上ると、裾が大きく割れて脚が見えてしまうことがあります。
「段差があるところや混雑している場所では、右腰の上前(上部の身頃)を右手で軽くつまんで歩くと楽ですよ。脚周りに余裕ができるので歩きやすくなります。しかし、上げすぎるとはしたなく見えるので、足袋(たび)が見えるくらいにとどめておきましょう」
「和服の袖についている、袋状の部分を袂(たもと)と呼びます。電車に乗ってつり革をつかんだり、高い場所にある物を取ったりするときは、反対側の手で袖口を軽く押さえましょう。二の腕まで丸見えになるのを防ぐことができます。食事中にテーブル中央の物を取るような場面も、袂を押さえることで着物を汚してしまうのを防げますよ」
この袖口を気にする所作は、洋装でも有効だそう。確かに、片手で袖を押さえながら物を取る仕草は、とてもエレガントに見えますね!
また、「着物はもちろん、洋服のときも懐紙(かいし)を持ち歩いていると品がよく見えます」と大塚先生。懐紙とは、お茶席などで用いられる柔らかい和紙のこと。数百円程度で季節の柄や文様が楽しめるので、着物デビューに先駆けて、日頃から懐紙を持ち歩いてみるのも素敵ですね。
関東を中心とした16校600名の講師陣のリーダーとして後継者を育成。また、きもの教育の普及にも幅広く活躍。特定非営利活動法人(NPO)和装教育国民推進会議で中学校での和装教育支援、王朝装束の着装技術・知識の継承にも尽力している。
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