お世話になった方へ感謝の気持ちを込めて贈り物をするお中元。昔からある夏の習慣ですが、触れる機会が少ないと基本的なルールを知らないまま……ということも。今回は、和文化研究家の三浦康子さんにお中元の由来やマナーをお聞きしました。
もともと、お中元とはいつからある風習なのでしょうか?
「お中元のルーツは中国にあります。かつて中国では1月15日、7月15日、10月15日を『三元』として神様をまつる習慣がありました。7月15日の『中元』が仏教の盂蘭盆会(お盆)と結びつき、日本では江戸時代に祖先供養のお供えものを贈る習わしができました。その後、親類やお世話になった方へ贈り物をする習慣に変化し、上半期の感謝の気持ちを表す贈り物として定着したのです」
お中元は旧暦7月15日のお盆の供物に由来します。しかし、お盆の時期は地域によって異なるため、贈る時期も地域によって変化するようです。
「東日本は7月初旬から7月15日まで、西日本は8月初旬から8月15日までとされています。最近は東日本式にそろえるところが多くなってきましたが、相手が異なる地域にお住いの場合は、念のため贈る前に確認するとよいでしょう」
デパートなど、お中元を購入する場所で地域ごとの時期を教えてもらえることも多いようですので、気になる場合は聞いてみても安心ですね。
三浦さんによると、お中元の一般的な相場は3,000円〜5,000円。また、お盆のお供えものに由来していることから、贈るものは食べ物が主流だそうです。
ライフメディアのリサーチバンクの「お中元に関する調査(2015)」によると、お中元一件当たりの予算は「3000 – 4000円未満」が35%でもっとも多く、贈る予定のものは「ビール(32%)」「菓子類(23%)」が上位という結果に。
一方、お中元で贈られるとうれしいものでは、「ビール(37%)」「商品券(33%)」が上位に挙がっていますので、アンケート結果がお中元選びの参考になりそうです。
お中元を贈る際に、気をつけたいマナーもあるようです。
「目上の方には、お金を贈ることと同様の金券類、踏みにじることに通じる履物類、勤勉を奨励する筆記用具や時計は避けたほうが無難です。また、会社宛に贈る場合、先方の会社のルールによって受け取りを禁止するところもありますので、その場合は控えましょう。また、お中元は一度きりのギフトと違い、継続性があります。さらに、お中元を贈ったら、お歳暮も贈るのがマナーとされています。もし、この夏一度だけ贈りたい場合には、のし紙は『お中元』とせず『御礼』としたほうがよいでしょう」
年賀状のように、お中元にも喪中は関係があるのでしょうか?
「お中元はお祝いごとではなく、日頃の感謝を贈るものなので、相手が喪中でもお贈りして差し支えありません。ただし、四十九日が過ぎていない場合には、時期をずらして『暑中(残暑)御見舞』『暑中(残暑)御伺い』にしたり、紅白の水引きは控えたりするといいでしょう。また、お中元をいただいた場合、お返しは不要です。とはいえ、お礼の気持ちを表すことは礼儀です。いただいた品に対する感想などを書き添え、喜んでいる様子が伝わるようなお礼状を出しましょう」
お中元は一般的に、両親や親戚、仲人、上司などお世話になった方に感謝の気持ちを添えて贈ることが多いもの。ただし、誰に贈らなくてはいけないという決まりがないため、最近はサマーギフトとして、友人にお中元を贈る方も増えているそう! 贈りたい気持ちを大切に、お中元を贈ってみてもよいかもしれませんね。
和文化研究家、ライフコーディネーター。わかりやすい解説と洒落た提案が支持され、テレビやラジオ、新聞、雑誌、Web、講演、商品企画などで活躍中。様々な文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。順天堂大学非常勤講師。著書、監修書多数。
公式サイト