秋になるとオペラやバレエ、クラシックコンサート、歌舞伎鑑賞など、劇場に足を運んで芸術鑑賞してみたくなりますよね。とはいえ「興味はあるけれどマナーがわからないから敷居が高い」、「観劇を楽しむための心得ってあるの?」など迷ってしまい、気後れしてしまう方も多いはず。
そこで今回は、年間100公演以上鑑賞し、おもにダンス・バレエを中心に記事を執筆・翻訳する森菜穂美さんに、知っておくと役立つ観劇の基本的なマナーをお聞きしました。
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まず気になるのは、着ていくもの! カジュアルな芝居やライブならともかく、クラシックな演目を大きな劇場に観にいく場合、何を着ていけばよいのでしょうか?
「ポイントは“出演者に会っても恥ずかしくない服装”です。せっかくの晴れの舞台、ぜひお洒落して出かけましょう。オペラやバレエなどは洋装が多く、歌舞伎であれば和装が場になじみます。日本で洋装をする場合は、ワンピースでも十分ドレスアップになります。仕事帰りなどでやむをえない場合は、コサージュなどのアクセサリーをつけたり、スカーフやストールなどを巻いたりして、華やかさをアップするのもオススメです」
森さんによると「舞台を快く満喫するためには、できるだけ開演の20分前までに到着することが大切」だそう。劇場に入ってから心がけたい行動のポイントを教えてもらいました。
「大きめの荷物やコートは、クロークに預けるのがスマートです。とくに冬場のコートは手持ちのままだと邪魔になり、座席を狭く感じさせてしまうほか、音響に影響を与えることも。欧米の劇場では預けることがマストの場合があります。カサカサと音を立てる袋や鈴のついたバッグも、預けておきましょう。また、クロークでは傘は預かってくれませんので、傘は傘立てに。
「公演中は、お手洗いが大混雑する場合が多いもの。開演前にお手洗いに寄っておいたほうが安心なので、20分前には到着しておきたいところです」
会場は人がごった返していて、もしも友達と待ち合わせをする場合は具体的な場所を指定し、確実に会えるようしましょう。例えば劇場入り口、プログラム売り場の前などがわかりやすいです。観劇では開演時間は厳守。遅れたら席に案内してもらえず1幕まるまる見逃してしまう……なんてことのないように。
「おなかを空かせすぎてしまうと、グーっとおなかが鳴る音が聞こえてしまうかもしれませんので、小腹を満たしていったほうがいいと思います。ただし、開演前に食事を済ませる場合には、においが強く、またそのにおいが残るようなものは避けましょう。劇場にはシャンパンなどのアルコールメニューも多く、華やかな気持ちになるためにいただくのはよいのですが、アルコールはほどほどに。公演に集中できない可能性もあります。また、香水のつけすぎも周りに迷惑となることがありますから、控えましょう」
いざ舞台が始まってからも、気をつけたいマナーがあります。
「前のめりにならないように、背中はシートにつけてください。着物での観劇も素敵ですが、姿勢がよすぎると後ろの人の迷惑になる場合もありますので、帯は小さめに結びましょう。また、大きな盛り髪やお団子ヘアも周囲の方の視界の邪魔になります。帽子も必ず脱ぎましょう」
「携帯電話はマナーモードにするだけでなく、必ず電源を切りましょう。また、劇場ではキャスト表やチラシの入ったビニール袋を受け取ることが多いのですが、ビニール袋の音は意外に気になるもの。膝の上に置くと上演中に落としたり、音を立てたりしてしまうこともあるので、バッグの中に入れておきましょう。
それから、咳が出やすい方は、開演前に飲み物やのど飴で喉を潤しておくと良いでしょう。その場合にはマスクのご用意も。もちろん上演中の私語は厳禁です! お友達との会話は、休憩時間や終演後にしてくださいね」
「万が一、遅刻した場合には、係員の指示に従い、暗転のタイミングや演目の切れ目に席に案内してもらいましょう。遅刻してしまうと、一幕まるごと観られない可能性もあるので、気を付けて! また、上演中に地震があった場合は、慌てず係員の指示に従いましょう。クラシックコンサートやオペラ、バレエを上演する会場は、ほとんどが耐震性が高い建物です」
最後に、劇場に持参しておくともっと観劇が楽しめるアイテムを教えてもらいました!
「座席が遠い場合など、出演者をよく見てみたいときには、オペラグラスを持っていくと表情や細かい仕草、テクニックなどがよく見えます。会場で貸し出してくれることも多いのですが、残っていないこともあるので、一つ持っていると便利です」
「プログラムを買う予定の方は、エコバッグを持っていくとスマートに持ち帰ることができます。劇場で受け取ったチラシ類もまとめて入れられて便利です」
「館内は空調がきいていて、少し寒く感じる場合もあります。ストールやカーディガンを用意しておくのもいいかもしれません。会場によっては、ブランケットを貸し出してくれることもあるので、必要な場合には係員に尋ねてみてください」
観劇は、自分自身の楽しみであるとともに、周りへの気配りも持ち合わせないといけない大人の嗜み。教えてもらったポイントを押さえて、劇場に集まった人たちと一緒に観劇を心ゆくまで楽しみましょう。
子供時代をロンドンで過ごす。企業広報、PR会社勤務、映画宣伝などを経て、フリーランスに。おもにダンス・バレエを中心に記事を執筆・翻訳。新聞、雑誌や海外・国内のWEBサイト、バレエ公演のパンフレットに日本語/英語で寄稿。年間100公演以上観劇し、海外でもバレエ公演を多く鑑賞。趣味でも大人バレエレッスンを受講。