「汗対策が必要な季節=夏」だと思っていませんか? 室内外の寒暖の差が激しい冬こそ、気づかぬうちに想像以上の汗をかく季節。そこで、おさめスキンクリニックの納さつき先生に冬の汗対策についてお話を伺いました。
高温多湿な夏とは違い、気温も湿度も低くなる冬。気候の変化とともに、汗のかき方や成分にも違いが出るのでしょうか?
「人は自律神経の働きで汗をかきます。気温の高い夏の間は、一定の体温を維持するために汗を出す働きが、比較的安定して作用します。一方、気温の低い冬は、冷たい外気と暖かい屋内の寒暖差によって、思いがけず汗をかくシーンが多いはず。身に着ける衣類も、通気性より保温性を重視した素材が多くなるので、汗が乾きにくい環境ともいえるでしょう」
確かに、屋外は冷えているのに電車や建物に入った途端、暖かな空気に包まれてじんわり汗をかき始めることってありますよね。また、日本人特有の体質として、夏よりも冬のほうが基礎代謝量が多いとのこと。これは、日本には四季という気候の変化があるためです。
「汗には、水分のほかにナトリウムや塩素、カリウム、皮脂などの成分が含まれています。空気が乾燥する冬は、体内の水分量も減少して、水分以外の成分が濃縮されていることも。よって、感覚的に夏の汗よりもニオイが気になったり、ベタっとしているという印象を持ったりする人は少なくありません」
汗に伴うニオイは気になるもの。特に脇や胸元といった体温が逃げにくい部位は、汗をかきやすいポイントであることを覚えておきましょう。
日常生活において、どんなに気を付けても、少なからず汗はかいてしまうもの。不快感を軽減し、快適に過ごすためにはどのような工夫が必要でしょうか?
「直接肌に触れるインナーの素材に気を配りましょう。汗の量や運動量によってかなり個人差がありますが、多汗の方は速乾性のものがいいでしょう。日常生活でしたら、お手入れは大変ですが、オススメの素材はシルクです。保湿性と保温性に優れ、肌が弱い人でも使いやすいと思います。肌から発散される水蒸気を熱エネルギーに変換する機能性インナーもうまく活用するといいですね」
必要以上に重ね着をすることなく、皮膚が薄く、毛細血管の集まった首や手首、足首の防寒を意識することで、効率的に体を温めるのも◎。もちろん、肌を清潔に保ち、肌荒れやニオイを予防するためにも、こまめに汗を拭き、必要な保湿剤を塗るのは基本のケア。これらの汗対策を心掛けて、厳しい冬も快適に過ごしましょう。
また、納先生によれば、「あまりにもいつもと汗のかき方が違うな…」と違和感を覚えたら、注意が必要な場合もあるそう。
「たとえば、いわゆる寝汗がひどい場合は『悪性リンパ腫』が原因であるケースも。そのほか、多汗の症状が起きやすいのは、『糖尿病』『甲状腺機能亢進症(バセドウ病)』『褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)』『パーキンソン病』『結核』『脳こうそく』など。これらは症状の一つに過剰な発汗が見られる病気です」
スポーツやお風呂上がりのシーン、緊張や辛いものを食べたときに汗をかくのは通常の生理現象。しかし、ごくごく稀ではありますが、原因がわからないのに必要以上の発汗がある場合、ご自分の体としっかり向き合う必要があるかもしれません。一度病院へ相談してみてくださいね。
おさめスキンクリニック医院長。2000年3月帝京大学医学部及び同大学院卒業。同大学附属病院皮膚科入局(助手、レーザー外来担当等)。国立国際医療センター、都内美容皮膚科等で研鑽を積み、多くの皮膚疾患診療経験を持つ。