寒い時期は、ゆったりとお風呂に浸かってから眠りたいですよね。でも、お風呂はリラックス効果が高いと知ってはいても、入浴する時間がなく、シャワーで済ませてしまうこともしばしば…。忙しい女性たちが効率よく入浴する方法はないのでしょうか? 今回は温泉療法専門医の早坂信哉さんに、効果的にできる時短入浴方法を聞いてきました。
「入浴には5つの作用があると言われていて、そのうち4つはシャワーでは得ることができません」と早坂さん。5つの作用とは以下の通り!
「体を温めることで血管が広がり、血液の流れがよくなります。血流がよくなると、体を動かすために必要な栄養分や酸素がスムーズに運ばれ、また老廃物や二酸化炭素が回収されやすくなります。それにより活動性が上がり、疲れが取れやすくなるのです。また、細胞の生成が活発になり、結果的に美肌効果につながります。これが入浴の最大のメリットと言えるでしょう。さらに、温熱作用によって、神経痛が抑えられたり、関節のこわばりが和らいだりするほか、免疫力が上がる場合があるとも言われています」
「水圧は体を締めつける効果があるのですが、これにより血液とリンパの流れが改善し、足のむくみが解消しやすくなります。ただし高齢者や心臓・呼吸器官にリスクを持っている人は圧迫されすぎる可能性があるので、半身浴にしましょう」
「プールの中で体が浮くように、お風呂の中でも若干体が浮き、首まで浸かると体重の10分の1になると言われています。地上にいるときは重力で引っ張られているので、絶えず筋肉が緊張している状態です。しかし入浴中は重力から解放されるため、体が軽くなって、リラックスできます」
「水の中では、素早く体を動かそうとしても動きません。これは、粘性・抵抗性と呼ばれます」
「体をきれいにする作用で、これはシャワーでも同じ効果が得られます」
体を洗い流すだけならばシャワーでも十分ですが、体の疲れやむくみを取る、リラックスする、美肌を作るといった効果を得るには、入浴が大切なようです。
では、より5つの入浴作用すべてを、しっかりと取り入れるのに効果的な入浴方法はあるのでしょうか?
「健康な人ならば、40度のお湯に10分間、肩まで浸かる全身浴が効果的です。これは夜寝る前に体をリラックスさせる場合で、もし朝に活動のスイッチを入れたい場合ならば、朝に42度で5分間全身浴をするのがいいでしょう。夏の暑い時期は、2度ほど下げてもかまいません」
ただし、長湯は厳禁だといいます。のぼせて体調不良になったり、皮膚から保湿成分が損なわれ、かえって肌に悪影響を及ぼしたりするそうです。
「40度のお湯で20分も入れば、もう長湯です。額や鼻の頭、頬から汗が出てきたら、湯から上がるサインだと思ってください」
とはいえ、仕事に家事、育児、介護などで忙しく、毎日ゆっくり入浴する時間がない女性も多いもの。全身浴をしなくても、入浴の効果を得るための効率的な入浴方法はないのでしょうか?
「忙しい方には、42度のお湯を15cmほど溜め、足湯をしながら、シャワーで体を洗うのがオススメです。足湯では水圧作用、浮力による効果、水の抵抗性などの効果は得にくいですが、温熱作用は働きます。シャワーだけよりは、リラックス効果が生まれますよ」
そのほかにも、時短テクニックとして入浴剤を取り入れるのもよいそうです。
「同じ時間入るにしても、入浴剤を入れたほうがしっかりと温まることができます。また、皮膚の弱い方は水に含まれる塩素で皮膚が荒れることがあります。グルタミン酸やアスコルビン酸などの入った入浴剤には塩素を除去する成分が入っているものが多いので、美肌のためにも入浴剤を入れたほうがいいでしょう。入浴剤を選ぶ場合は、医薬部外品や化粧品として表示されているものを目安の1つにして購入すると安心です」
ちなみに習慣的に湯船につかっている人は、健康状態がよく、睡眠の質も高く、また幸福度が高いという調査結果が出ているのだとか。逆にシャワーだけの人は、すべての項目が低いそう…。
「毎日入浴するのが望ましいですが、たとえば週末だけでもかまいません。自宅のバスタブが狭かったら、銭湯に行くのでもいいですよ。健康そして美容の一環として、忙しいなかでも、少しずつ入浴を習慣づけられるといいですね」
時短テクニックを活用して、心身ともにキレイになりましょう!
宮城県出身。1993年自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。2002年同大学院修了、博士(医学)。その後、浜松医科大学准教授、大東文化大学教授 などを経て2015年東京都市大学人間科学部教授(現職)。入浴や温泉と健康の関係に詳しく、「世界一受けたい授業」「ホンマでっか!?TV」「林修の今でしょ講座」ほか、テレビ番組に出演多数。著書は『たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法』(角川フォレスタ)など。
公式サイト